目次
今回はまず、クイズから始めたいと思います。

2017年に実施された調査(注1)によると、この4つのヘアスタイリング剤の人気順は以下の通りです。
1位 ヘアスプレー
2位 ヘアワックス
3位 ヘアムース
4位 ヘアジェル
1番人気はヘアスプレーでしたが、今回試すヘアワックスは人気でいえば2番目です。
また、別の調査によれば(注2)、ヘアワックスを使っている年代は10代から40代前半が中心。
ヘアスプレーは比較的年齢が高い層に使われていることが多いことを考え合わせると、ヘアワックスは「若者人気No.1のヘアスタイリング剤」と言っても過言ではありません。
そんなヘアワックスの「髪を立たせる力」は、一体どのくらいのものでしょうか?
前回の実験記事、「ヘアスプレー編」もご確認のうえ、ヘアワックスの「立たせる力」をご覧ください。
(注1) ヘアスタイリング剤に関するアンケート調査より(マイボイスコム調べ)
(注2) mandom Annual Review 2015 より

実験結果をお知らせする前に、今回の実験対象となる「ヘアワックス」についてもっと詳しく見てみましょう。
日本のヘアスタイリング剤界にヘアワックスが登場したのは、1990年代。
最初は美容室で使われていましたが、注目されるようになったのは、ドラッグストアやスーパーで資生堂の「GERAID デザインワックス」の販売が始まった1996年からです。
"無造作ヘア"というキャッチコピーのもと、ウルフルズの面々が「GERAID デザインワックス」を使うCMがTVで流れ、一気にヘアワックスの認知度が高まったのでした。
このワックスが従来のヘアスタイリング剤と違っていたのは、スプレーやムース、ジェルがセット剤としてポリマー(樹脂)を使うのに対し、油分や蝋(=ワックス)で髪を固める点にあります。
市販ワックスの元祖、「GERAID」の「ファイバーインワックスN」を例にとり、成分表示を確認してみましょう。

GERAIDの公式サイトに成分表示が出ています。
これらのうち、髪を固めるセット剤の成分は次の通りです。
油系成分 | ミネラルオイル、パラフィンなど |
蝋系成分 | マイクロクリスタリンワックス、キャンデリラロウ、カルナウバロウなど |
こうしてみると、ヘアスプレーの成分としてたくさん配合されていたポリマー、コポリマーは全く入っていません。
ちなみにこのポリマーやコポリマーは、ヘアムースやヘアジェルでも髪を固めるセット剤として多用されている成分。
これらが配合されていないヘアワックスは、ヘアスタイリング剤としてはかなり個性的な成分構成だと言えるでしょう。
この違いが他のヘアスタイリング剤とどのような違いを生むのか、さっそく結果をご覧ください!
今回の実験で使う製品を選ぶに当たり、設定した条件はスプレーとの時と同様、
- ①普通にコンビニ、スーパー、ドラッグストアで売っている
- ②男性向け
の2点でした。
編集部員・Iがスーパーやドラッグストアで見つけて買ったのは以下の4商品です。
1.GATSBY パーフェクトホールドワックス エクストラハード 60g マンダム (参考価格:660円)
今回のラインナップのなかで、もっとも蝋感(ワックス感)が強いのがこのGATSBY。公式ページでは「最硬ホールド! No.1耐久力」というコピーでハードさをアピールしています。


蝋的な硬さがあるワックスです
2.LUCIDO ヘアワックス スーパーハードO 70g マンダム (参考価格:550円)
こちらは見た目も質感も、パンに塗るタイプのクリームチーズのような見た目。とはいえベタつきはなく、扱いやすい印象です。


トロ艶感あり。
3.UNO ハイブリッドハード ワックス 80g 資生堂 (参考価格:640円)
やや黄色がかったクリーム色で、見た目やさわり心地は固まる直前の濃厚な豆腐といったところ。
公式サイトでは「ハードなセット力」と言いながら、「固まり過ぎず、素髪のようなナチュラルな仕上がり」とも言っており、キープ力に一抹の不安があります。


なめらかな触感です。
4.GERAID ファイバーインワックス ファイバーインワックスN 75g (参考価格:940円)
ワックス人気に火をつけたGERAIDからは、パッケージの裏面に貼られたシールに「激しい動きの無造作ヘアもバッチリキメてくずさない」と書かれたこちらをチョイス。
見た目や質感は、すごく糸をひくマヨネーズといったところです。


このように糸を引くGERAID。
なお、GERAIDの商品名にある「ファイバーインワックス」ですが、ファイバー、つまり"繊維"を配合しているという意味です。
ファイバーを配合したワックスは、繊維の働きで髪の動きを繊細に表現できるとされています。
また、糸を引くのもファイバー配合ワックスの特徴。
髪なじみがよく、髪全体にのばして使うことができます。
それでは、実験に移りましょう。

- 1.朝10時に髪を立たせる。その際、どの程度自由にスタイリングできるか、髪を立たせることで検証する。
- 2.夕方18時に、立たせた髪がどの程度維持できているかをチェックする。
- 3.香料が入っているものは香りの持続性を、10時と18時を比較して検証する。
- 4.スプレーを水で洗って落とし、「落としやすさ」も検証する。
という前回と同じ方法で試し、評価していくこととします。
それでは実験、開始!
まずは、「GATSBY」と「LUCIDO」のマンダム勢から試すことにしましょう。
編集部員・Iの向かって左の前髪に「GATSBY」、右に「LUCIDO」のワックスをつけます。

一旦ドライヤーで髪を整えて…

ワックスをつけて立たせます。
立たせた結果がこちら。
バッチリ立っていますね。

小気味よさすら感じられるまっすぐな立ちです。
とはいえ、統合的にみて両者とも髪を自由自在にアレンジする「スタイリング力」はかなり高いレベルにあります。
しかし、ワックスを編集部員・Iの頭につけていた別の編集部員は、不安そうな顔。
「髪が固くならないんですよね。スプレーより長く持たないかも」
スプレーほどのキープ力はないのではないか? と言います。
この予言がはたして当たるのでしょうか…。
8時間後の写真がこちらです。

ホセ・メンドーサとの激闘に力尽きたジョーを思い出させる髪の弱々しさ。
ああ…どちらの前髪も力尽き、地に伏してしまっていますね。
とくに向かって右の「LUCIDO」は、立たせていたとは思えない状況です。
BeforeとAfterを比較してみましょう。

「立たせ続ける力」については、残念ながら両者とも★の数は多く与えられません。
ちなみに香料が入っているGATSBYの香りは…。
匂いを嗅いだ編集部員たちの判定は、「消えている」との評価でした。
さて。
実は編集部員・Iには、「ヘアワックスは落としにくいのではないか」という疑問がありました。
なぜならワックスには、水に溶けにくい油や蝋といった成分が使われているからです。
落ちなかったらどうしよう、という不安を抱えながらオフィスの洗面所へ行き、水で洗い流してみたところ…。
「思ったより落ちやすい!」
嬉しそうな編集部員・Iの声です。
スプレーのように水を弾くことなく、自然に洗い落とせたのでした。
今回の検証結果を表にすると、次の通りです。
商品名 | スタイリング力 | キープ力 | 香り持続力 | 落ちやすさ |
GATSBY パーフェクトホールドワックス エクストラハード | ★★★★ | ★★ | ★ | ★★★★ |
LUCIDO ヘアワックス スーパーハードO | ★★★★★ | ★ | 無香料 | ★★★★ |
翌日は、向かって左の髪を「UNO」で、右を「GERAID」で立たせました。
こちらがスタート時の写真です。

屹立していますね。
実は今回も、立たせにくいワックスがありました。「GERAID」です。
なんとか立たせたのが写真の状態。
このまま編集部員たちがそーっと触って見たのですが、 「スプレーのような硬さがないです」 「8時間も持たないと思います」 と、キープ力を疑問視する感想が相次ぎました。
そのまま編集部員・Iは仕事を続け、8時間が経過したのち。
前髪はどうなったでしょうか。

引力に負けてしまった…
ほぼ水平に近いところまで髪がお辞儀をしてしまいました。
編集部員たちも力を失った髪の感触を確かめています。
「ワックスは立たせ続けるのは苦手みたいですね…」

BeforeとAfterの比較はこちらです。

しかしよく見てみれば、「GATSBY」「LUCIDO」の倒れっぷりに比べ、「立たせているんだな」と分かる角度を保っているとも言えます。

ちなみに香りが入っているUNOについては、8時間後は「香りがまったくない」という評価。
そして注目の水洗いですが、昨日同様、
「やっぱり落ちやすい!」
というのが編集部員・Iによる評価でした。
結果を表にまとめましょう。
商品名 | スタイリング力 | キープ力 | 香り持続力 | 落ちやすさ |
UNO ハイブリッドハード ワックス | ★★★★★ | ★★★ | ★ | ★★★★ |
GERAID ファイバーインワックス ファイバーインワックスN | ★★★★ | ★★★ | 無香料 | ★★★★ |
ヘアスプレーに比べると「キープ力」で結果を出すことができなかったヘアワックスですが、それはなぜでしょうか。
最大の理由は、「ヘアワックスは短い髪のスタイリングにこそ向いている」という点にあります。
たとえば、「GATSBY パーフェクトホールドワックス エクストラハード」は公式サイトでは「ベリーショートヘアに最適」と、親切に教えてくれているほどです。
考えてみれば、短い髪をスプレーで立たせようとすると、おでこや地肌にまで液剤がかかってしまうことが簡単に予想できます。
むしろ指先で柔軟にスタイリングできるヘアワックスのほうが、短髪を整えやすいはずですよね。
- 今回の実験は、髪が短いほうがスタイリングしやすいヘアワックスにとって厳しい条件だった。
- キープ力の★の数が少ないのは、ヘアワックスの個性であって、評価を割り引く必要などない。
- むしろ「落としやすい」という優れた点もある。
これが今回、ヘアラボ編集部が出したヘアワックスの真の評価です。
再度、評価をまとめて表にしましょう。
商品名(参考価格) | スタイリング力 | キープ力 | 香り持続力 | 落ちやすさ |
GATSBY パーフェクトホールドワックス エクストラハード (660円) |
★★★★ | ★★ | ★ | ★★★★ |
LUCIDO ヘアワックス スーパーハードO (550円) |
★★★★★ | ★ | 無香料 | ★★★★ |
UNO ハイブリッドハード ワックス (640円) |
★★★★★ | ★★★ | ★ | ★★★★ |
GERAID ファイバーインワックス ファイバーインワックスN (940円) |
★★★★ | ★★★ | 無香料 | ★★★★ |